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設立趣旨

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設立趣旨

 近年のAIを含む情報技術の発達は、日々発生する極めて膨大な量のデータを容易に蓄積・保管し、それら総合的に利活用することを可能にした。

 日常の診療において、患者情報として種々のデータが恒常的に生まれる医療の現場こそは、まさに、これら新技術を積極的に取り入れるべき世界と言える。しかし、そのためには、従来の紙カルテの時とは違って、各データは構造化されたデジタルデータとして電子媒体上に網羅的に収集できることが求められる。この様にして蓄積されるデータは、従来の臨床試験のデータ、つまり、予め目的と期間を定めて一部の限られた数の患者から収集されたものとは異なり、データサイズが著しく大きい上に、多様な背景を有する患者の実臨床像をも反映しうることから、広く、リアルワールドデータ(Real World Data : RWD)と呼ばれている。RWDを用いた研究から得られる知見をReal World Evidence (RWE)という。

 わが国でも2010年前後から電子媒体による医療データの収集・保管が始まり、その普及とともに、National Data Base(レセプト情報・特定健診データ)、介護レセプト情報、DPCデータ、PMDAによるMID-NET、National Clinical Database (NCD)、患者登録(Patient Registry)など、RWDにふさわしいビッグデータが次々と登場しており、RWE創出に向けた期待は高い。

 しかしながら、残念なことに、わが国の医療デジタル化のあるべき姿と現状との間には大きな乖離がある。法制度、技術の両面で種々の課題に対する対応の遅れから、データ連携のための基盤整備が進まず、社会実装が遅れ、国民のメリットとなるRWEの創出どころかRWDの積極的利用にも至っていないのが現実である。

 RWDを利用し、RWEが効率的に創出できるようになれば、医療の質は飛躍的に向上する。一例を挙げれば、有効な新薬開発の効率化である。現行の薬事承認制度では、原則、二重盲検試験といって、開発した薬剤を投与する群(実薬群)と薬効のない偽薬(プラセボ)を投与する群(プラセボ群)との間で効果を比較し、有効性を示すことが求められる。しかし、二重盲検試験は多額の経費がかかるだけでなく、プラセボ群となった患者にとっては治療機会の逸失でもある。医療スタッフにとっても治療に関わる患者の半数がプラセボ群であることによる心の負担は少なくない。このような時、RWD/RWEが使えれば、プラセボ群用のデータはそれで代替すればよく、プラセボ群の設定は不要となる。まさに「プラセボのない世界」の実現である。

 この他にも、RWDの利活用が進めば、医療・介護サービスの効率化と適正化、行政による医療政策の評価・対策の促進、医学研究における疾患解明、患者の医療へのアクセスと満足度の向上、等々につながることは必定である。

 今般のCovid-19感染症では、世界中で多くの犠牲や社会・経済の混乱が生じた。わが国の医療でも、危機管理の視点から見て、医薬品・医療機器・機材の安定供給態勢を見直すべきことの重要性が強く指摘されたところであった。しかし、一方、海外では、グローバルな臨床情報の収集やゲノム解析が極めて迅速になされ、早々にRWEが構築され、一刻を争うワクチンや新治療法の開発が遅滞なく進んだことも明らかとなった。残念ながら彼我の差は歴然であった。

 医療デジタル化が我々一人ひとりの生命を救う重要な鍵であることは自明である。

 

 わが国が直面しているこの隘路を乗り越えるために、今、不可欠なのは、医療分野においてもPublic-Private Partnership(PPP)の構築を図ることではないだろうか。医療分野のPPPとは、対話を通して医療デジタル化のあるべき姿を行政とも共有しながら、RWDから医療イノベーションに繋がる様々なグローバルRWEを民間の活力で創出し、世界中に拡大して行くことを可能にする取り組みである。

 こうした状況下、我々は最も緊急性が高いと思われる「薬事目的でのRWDからRWEの創出・活用」に注目し、医療分野における新たなPPPとして「グローバルRWE創出プラットフォーム協議会」を設立したいと考えている。各位の幅広いご支援とご参画をお願いしたい。

2022年7月

一般社団法人グローバルRWE創出プラットフォーム協議会
 理 事 長 河内山 哲朗

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